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「どうですか、掛りさうかね」
「それから、あれだが、今までよう訊かなんだが、――あれは、どうしたもんかの、大石さんの方は?」
「あら、お帰んなさい。随分早かつたのね。もう済んだんですか」
房一は苦笑した。
徳次は慌てた。
人に話しかけるときにも半分はきまつて独り言のやうになつてしまふ義母はどうもつれ合ひの道平の癖が丸うつりになつたものらしい。だが、道平の声音こわねはあまり響かないぽつりぽつり石ころを並べるやうな調子だつたのにひきかへ、この義母のは突拍子もなく起つて又駆足で空の向ふに消えてゆくやうな大声だつた。
房一は狡猾な顔で老医師を見た。だが、前よりなほ気楽げな様子になつた正文は、房一の方をろくに見もしないで、
「ね、お母あさん。これ、こんなに汚いでせう。もう少し……たいんですけど。……でせうねえ」
「はあ、見て参ります」
「さあ、知らん」
練吉はそれなり黙つた。
男は力なげに口をあけていた。